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本特集は、お客さまからの資産にまつわる“さまざまな想い”に、「財前誠吾」が徹底的に寄り添い、ゴールへと導くショートストーリーです。ストーリーを通じて、とあるウェルスマネジメントの世界を紐解きます。
  1. ストーリーはフィクションです。登場する人物・会社、エピソードは事実に基づいたものではございません。
製薬会社を退職し、投資によって十億円を超える資産を築いた佐伯正志は、不自由のない暮らしを送りながらも、ふえ続ける富にどこか実感を持てずにいた。ある日、地元文化に関するニュースや、かつての同僚が文化保存に携わる姿に心が動く。さらに、妻の何気ない一言が、忘れていた自分の興味や記憶に静かに火を灯した。そんな内面の変化を長年の担当者・財前に相談する中で、“文化を支える仕組み”という考えが輪郭を持ちはじめる。やがて佐伯は資産の一部を地域に役立てる決意を固め、「一般財団法人 地域文化つなぐ基金」を設立。小さな一歩が、自身の人生と地域の未来をやさしくつないでいく。

薄まる手応え

退職して三年が過ぎた。
佐伯正志の朝は、いつも同じ穏やかさで始まる。カーテン越しの淡い光で夜明けを知り、静まりかえった家の中で朝の気配を感じ取る。そんな一日のはじまりが、生活のリズムを静かになぞっていく。
コーヒーを淹れると、習慣のようにパソコンを開く。市場の数値は今日も淡々と推移していた。長年の投資で積み上げた資産は十億円を超え、製薬会社を引退後も減るどころかふえ続けている。
海外で働く息子の暮らしも安定している。仮に何かあったとしても支えられる――そんな余裕があるだけに、富の“行き場のなさ”が静かに意識の底に沈殿していた。
その感覚は、日々の相場確認でも顔をのぞかせた。数字は順調にふえているのに、画面の光はどこか冷たく見える。数字だけ見れば悪くない推移なのに、心がほとんど動かない――
そんな自分にふと気づく瞬間があった。
画面を閉じると、胸の奥に小さな空白がのこる。生活は整っている。それでもどこかに手応えがない――その思いが、ここ最近、ゆっくりと積もり始めていた。
昼前、息抜きに散歩へ向かうと、川沿いの遊歩道はいつもの表情で迎えてくれた。風の匂いや光の角度は季節を正確に告げてくるが、その変化を受け止める自分の内側は、なぜか同じ場所に留まったままのように感じられる。立ち枯れた葦を横目に見ながら、佐伯は思う。
――自分は、どこに向かっているんだろう。
問いは曖昧なまま、散歩道の景色に溶けていった。
そんな日の午後、ソファに腰を下ろしてSNSを眺めていたとき、ふと指先が止まった。
「文化資料館の修復ボランティアに参加しました」
それはかつての同僚の投稿だった。
一緒に投稿されていた画像には、古文書の破れを調べる手、陶片を慎重に並べる人々の姿があった。光の入る静かな部屋で、時間をかけて“何かをまもる”作業が行われている。
その光景を見た瞬間、胸の奥に、ごくかすかなざわめきが生まれた。羨望とも違う。ただ、自分の内側のどこかが、小さく温度を変えたような感覚だった。
佐伯は、その後も関連する記事を追うことに没頭した。文化資料館の展示、保存活動、地元の歴史にまつわる小さなニュース。普段とは違う種類の画面を前に、思わず時間を忘れていた。
夕方、買い物から戻った妻が食材を冷蔵庫にしまいながら横目で夫を見た。
「あなた、最近よく地元のニュース見てるわよね」
その言葉に、佐伯は、気づけば返事をしていた。
「同僚が文化資料館で活動してるのを見たんだ。なんだか、良さそうで」
妻は少し意外そうに眉を上げた。
「あなた、昔から古いものとか、歴史の話が好きだったじゃない。忘れてたの?」
その言葉が、思いがけず胸にのこった。忘れていたのではなく、どこかにしまい込んでいただけなのかもしれない。
そんな折、銀行の担当者・財前誠吾との定例面談の日がやってきた。
十年以上の付き合いで、佐伯の生活や性格を深く理解している人物だ。報告は淡々と進み、資産状況は問題なく推移していた。
報告書を閉じた財前は、わずかな間を置いて言った。
「佐伯さん、最近……何か考えていることはありますか?」
核心に触れるような問いだったが、彼だからこそ、不思議と身構える必要を感じなかった。
「資産がふえるのはありがたい。でもね……どこか、実感がなくて」
その言葉は、自分の口から出たとは思えないくらい自然だった。
財前はゆっくりと頷き、声を落として言った。
「富には“まもる・ふやす”だけでなく、“つなぐ”という側面があります。目的が生まれると、数字はまた別の意味を帯びるものですよ」
その言葉は、すぐに答えになるようなものではなかった。
けれど、胸の奥に静かな余韻をのこした。“つなぐ”という発想が、心の片隅に小さな火のように灯った。
面談を終えて外へ出ると、夕暮れの光が川面に揺れを作っていた。
その揺らぎを眺めていると、胸の奥でゆっくりと何かが動き始めたような気がした。
――ふえ続けるだけの富は、ただ静かに積もっていくだけだ。
――だが、その先を考える余地があるのなら。
答えはまだぼんやりしている。
それでも、胸のどこかに新しい風が通ったような、その感覚だけが確かにのこっていた。

社会へのリターン

財前の言葉が胸の内側にのこった。
それは強く響く主張ではない。だが、ふとした瞬間に思い返してしまう程度には、佐伯の意識のどこかを確かに揺り動かしていた。
そして一晩たち、翌朝になってもその感覚は薄れなかった。
朝のルーティン自体は変わらない。コーヒーを淹れ、パソコンで市場を見る。数字は今日も整然としている。
けれど、その画面に向かうときの気持ちの重心が、少しだけ変わっているのに気づいた。
“今日はいくら動いたか”ではなく、
――この数字の向こうで、自分は何を見たいのか。
そんな問いが、自然に浮かんでくる。
一度抱いた問いは、すぐには消えない。薄い水面にそっと波紋が広がるように、考えの端をかすかに揺らし続ける。
以前なら、株価の推移をただ数字として眺めていた。ところが今では、同じはずの数値が、どこか異なる表情を帯びて見える。――財前の言葉が、意識の底にひそやかにのこり続けているのだ。
そんな折、地元のニュースサイトで小さな見出しが目に入った。
――「里山陶芸祭、今年の開催見送りへ。支援不足」
数行の記事だったが、胸の奥に思いがけないさざ波が立つ。
その瞬間、佐伯の脳裏に“父の背中”とともに、もう一つの記憶が蘇る。
小学生の頃、会場の隅で年配の職人が言った言葉。
『この手の技はな、続けたいって思う人間がいないと、あっという間に消えるんだ』
佐伯はその時には深く考えなかったが、帰り道で父がぽつりと「のこすってのは、誰かが支えないと続かないものだ」と言っていた。その言葉だけは、なぜか長く胸にのこっている。
その日の夕方、夕食の準備をしていた妻が皿を並べているのを見ながら、佐伯はふと思い出したように口を開いた。
「地元の陶芸のイベント、今年は中止らしい」
妻は軽く笑って言った。
「……なんだか、今は前より気にしているみたいね。そういうの」
その一言が、佐伯の変化を静かに照らしていた。
言われてみれば、確かにずっと興味を持ち続けていたのかもしれない。けれど、仕事や生活に追われるうちに、自分でも気づかないうちに見流すようになっていた。今なら、ちゃんと向き合うのにいいタイミングなのかもしれないと思い始めていた。
数日後、財前との面談では、数字の報告が終わると佐伯は自分から話を切り出した。
「文化って……支える人がいなければ、本当に消えていくんですね」
財前はペンを置き、少しだけ姿勢を正した。驚いた様子は見せず、むしろその言葉の重さを確かめるように沈黙を受け止める。
「……そう感じられたんですね」と微笑み、言葉を続けた。
「長いお付き合いになりますが、佐伯さんがそういう話をされるのは珍しい気がします」
そこに批評めいたニュアンスはない。ただ、佐伯の変化をまっすぐ受け止める眼差しをしていた。
「支え方というのは本当にいろいろな形があります」と財前は切り出し、さらに続けた。
「寄付、助成、プロジェクト単位の継続支援……。佐伯さんのように組織運営の経験がある方なら、仕組みの側に回る選択肢もあります」
仕組みの側に回る――。
その言葉は、財前の口調の穏やかさとは対照的に、佐伯の胸の奥に明確な輪郭をのこした。
地元の文化が衰えていくニュースを見るたびに感じた、あの胸のわずかな痛み。父の背中とあの空気を思い出したときの熱感。ばらばらだったはずの感覚が、ひとつの線でつながっていく。
財前との面談の帰り道、川面に映る光がゆっくりと揺れていた。以前はただ眺めるだけだったその揺らぎに、
――ここから先の時間を、どう使いたいのか。
そんな問いが、少しずつ形を持ち始めていた。
答えはまだ曖昧だ。けれど、方向だけは見え始めている。
“文化を支える”という言葉が、心のどこかで静かに形を持ち始めていた。
佐伯は、その夜遅く、財前に短いメールを送った。
「文化を支える仕組みについて、もう少し聞かせてください」
送信ボタンを押したあと、胸の奥に静かな確信が生まれた。
大きくはないが前へ進んだ感覚――まだぼんやりとではありながらも、それが確かな現実の輪郭を持ち始めていた。

名を刻む決意

文化を支える仕組みについて、財前とメールや電話でやり取りを重ねる日々が続いた。
富をどう使うかではなく、自分が地域へ何をのこしたいのか――
その問いが、佐伯の中で次第に現実的な輪郭を帯び始めていた。
そんな中、ある日、財前から簡潔な資料が送られてきた。
文化支援の手段や、小規模な財団を動かすうえで必要となる専門家たちの役割を示したものだ。
寄付だけで終わらせる方法もある。だが、長く支えるなら――仕組みとしてのこす必要がある。その理解が、より胸の奥に深まっていった。
その内容に目を通すうち、佐伯の中で考えを整理したいという思いが次第に強まっていった。
そうした気持ちを踏まえるように、財前から「一度、専門家の話を聞いてみませんか」という連絡が入った。
佐伯は、その一文を読みながら、しっかりと自分の考えを整理する時間がもらえたと感じた。急かされているわけでも、方向を決められているわけでもなく。
数日後、佐伯はその提案を受けることにした。
しばらくして、文化支援の仕組みにくわしい設立コンサルタントを中心に、会計士らが同席する形で、話を聞く機会が設けられた。
小さな会議室に入ると落ち着いた空気が漂っていて、佐伯はその静けさに身を委ねるように息を整えた。皆に説明する中で、佐伯は自分の気持ちをそっと言葉に置き換えた。
「文化をのこすなんて、大げさなつもりはないんです。ただ……受け取ってきたものを、この先ものこる形にしたいと感じていて」
佐伯がそう言うと、会議室にいた三人は一瞬だけ視線を交わし、それから最初に口を開いたのはコンサルタントだった。
「とてもまっすぐな動機ですね。財団づくりは理屈より、その“根っこ”が大切です」
続いて会計士も資料を閉じ、落ち着いた声で言葉を添える。
「金額の部分は、目的に合わせて無理のない形に組み立てていけます。背伸びをする必要はありません」
コンサルタントはメモを取りながら、控えめな笑みを見せた。
その柔らかい反応に佐伯も肩の力が少しだけ抜けた。
そして、コンサルタントは資料を軽くめくり、話の流れをそっと引き取った。
「では、その想いを実現するためにどのような形が最適か……。今日のところは、手続きの流れを簡単にご説明しますね」
コンサルタントは手続きの道筋を、会計士は運営に必要な数字を簡潔に説明していく。その落ち着きが、むしろ佐伯の迷いを静かに支えていた。
富の一部を地域にのこし、その先へつないでいく――
そんなぼんやりしたイメージが、次第に手触りをもって胸へ落ちていく。
「拠出額ですが……」
会計士が静かに切り出した。説明というより、佐伯が考えを置ける場所をそっと示すような声音だった。
佐伯は資料に映る数字へ視線を落とす。
――どれだけを未来へのこしたいのか。
――どこまでなら、自分の生活も家族の安心も揺らがないのか。
会議室の空気がゆっくりと沈み、佐伯の思考が深まる時間を誰も邪魔しなかった。
やがて、佐伯はひとつ息を整える。 
 自分の内側で形になった答えが、自然に言葉へ変わった。
「……一億円にしましょう」
求められた額ではない。無理がなく、自分の中で腑に落ちた数字だった。
専門家たちが静かに頷き、手続きが一定の速度で進んでいく。
財前は余計な助言を挟まず、ただその選択を受け止めていた。
そして数週間後――
「一般財団法人 地域文化をつなぐ基金」が登記された。
工芸に限定せず、地域文化全体を対象とする形へと広げた。それは佐伯自身の経験と記憶が、ひとつの分野に収まりきらなかったからだ。
陶芸、漆、木工、古建築、祭礼の記録――土地の呼吸を形づくるものは、どれも等しく心にのこっていた。
報告を受けた妻は、長い説明を求めず、ただ一言こう言った。
「あなたらしいと思うわ」
その言葉は、背中に軽く手を添えるような穏やかさで胸に届いた。
季節がひとつ巡った頃、基金が支援した企画展が開かれた。
若い職人たちが並べた作品はまだ粗さものこるが、光に照らされるその表情には、迷いよりも前へ進む気配が強く、見る者の足を自然と止める力を持っていた。
木の香り、漆の光沢、金属の冷たさ――どれも佐伯の幼い頃の記憶と、今の時間とを静かにつないでくれる。
そして展示台の前で足を止めると、背後から財前の落ち着いた声が届いた。
「形になると、実感が湧きますね」
佐伯は作品から目を離さずに頷いた。
「……ええ。まだ小さな一歩ですが」
「小さな一歩が、文化を支えていくんです」
その言い方は、押しつけではなく想いを静かに述べるようだった。
会場を出ると夕陽が街を深く染めていた。壁の色も影の長さもゆっくりと一日の終わりを告げている。佐伯は立ち止まり、静かに息を吸った。
――富をふやすだけの日々は、ひとつの役割を終えたのかもしれない。
――これからの時間は、誰かの未来にのこすために使っていけばいい。
派手な物語ではない。
けれど、その想いは磨かれた石のように静かに光り、
佐伯の未来の道を淡く照らしていた。
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財前誠吾プロフィール

財前 誠吾(ざいぜん せいご)
長年の海外赴任を経て、現在は国内大手金融機関のウェルスマネジメント部門に所属。
財前の顧客へのアプローチは、まず人生のゴール(想いや願い)を聞くことから始まる。その中において、資産はあくまでもゴールへの到達手段の一つに過ぎない。それよりも資産にまつわる“さまざまな想い”を徹底的に紐解き、より具体的なゴールへの道筋を組み立てていく。財前の元には多岐にわたる相談が日々舞い込む。顧客の真の想いとは何なのか。ゴールへの道筋をどのように描くのか。財前の挑戦は続く。

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    「社会貢献活動」とは、その名の通り「社会」のために役立つことを行い、その社会の発展や継続に「貢献」する活動のことを指します。一般論として、富裕層になればなるほど社会貢献活動への興味関心は高まるといわれており、特に、まとまった資金を動かせる資産家の間では、財団設立を通じて、社会に貢献するケースも見受けられます。

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