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遺言書の書き方や必要なケースの解説~付言事項の役割とは
遺言書の書き方や必要なケースの解説~付言事項の役割とは

遺言書の書き方や必要なケースの解説 付言事項の役割とは?

遺言書は、亡くなった後の財産の分配方法など、相続に関する想いをのこすための書類です。遺言書がなければ、財産などの配分をめぐって相続人同士で揉め事が発生する可能性もあるため、自分の意思を遺言書として残しておくことをおすすめします。
ここでは、遺言書が必要になるケースとその書き方のほか、付言事項などについて解説します。

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  1. お問い合わせ・ご相談はスパイラル株式会社が運営するサイトにて受け付けております。

遺言書とは?

遺言書とは、相続に関する想いをのこすための書類です。遺言書があれば、その内容は原則として法定相続分よりも優先されますが、遺言書がなければ相続人全員で遺産分割協議を行い、分割方法などを決めることになります。

なお、遺言書の種類としては、一般的に「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」があります。それぞれの特徴を知った上で、遺言書を作成するようにしましょう。
遺言書のくわしい説明は、下記の記事をご覧ください。

遺書と遺言書の違い

遺書とは死後のために書き残す書面のことをいい、記載する内容は遺産の処分や遺族への訓戒など様々です。ただし、財産の処分に関することや相続に関すること、身分に関することなど、死後に行ってほしいことを遺書に記した場合であっても、その内容が法律的に効力を持ちうるためには、民法に規定されている方式に則った書面とすることが必要になります。
一方、遺言書は死後のために書き残す書面であることは遺書と変わりがありませんが、遺言でできることは民法によって定められています。また、作成方法や方式についても民法で定められており、これらを満たされていないものは法律的に効力を持ちません(民法960条)。

■遺言で出来ること

1.財産の処分に関すること
  • 第三者への遺贈(遺言により財産を与えること)
  • 社会に役立てるための寄付
  • 財産の保全、または有効活用のための信託設定
2.相続に関すること
  • 法定相続分と異なる割合の指定
  • 相続人ごとに相続させる財産の特定
  • 遺産分割の禁止(5年)
  • 生前贈与、遺贈の持戻しの免除
  • 遺留分侵害額の負担方法の指定
  • 共同相続人間の担保責任の減免・加重
  • 遺言執行者の指定
3. 身分に関すること
  • 認知
  • 法定相続人の廃除、またはその取り消し
  • 未成年後見人、または後見監督人の指定

  • 遺言により遺産を換金処分した時、譲渡所得税が課税される場合や、法人等に財産を遺贈した時、みなし譲渡所得税が課税される場合があります。くわしくは、税務署または税理士等の専門家にご確認ください。
    なお、法律で定められている事項以外に、感謝の気持ちや思い出などをしたためたい場合は、付言事項に記すことができます。付言事項については「4. 付言事項で想いを伝えられる」をご覧ください。

遺言書を作成するメリット

遺言書を作成することで、遺言者の意思を示せるだけでなく、それ以外にもいくつかのメリットがあります。続いては、遺言書を作成するメリットをご紹介します。

1. 遺言者の意思に沿った相続内容を決めることができる

遺言書を作成するメリットのひとつは、遺言者の意思に沿った内容の財産分配ができるということです。
遺言書がなければ相続人全員で遺産分割協議を行い財産の分割方法などを決めますが、被相続人の意思とは異なる分割内容になる可能性も考えられます。特定の相続人に多く財産を残したい、特定の相続人に特定の財産を残したいなどの想いがある場合は、遺言書を作成するとよいでしょう。

2. 法定相続人以外にも財産を引き継がせることができる

法定相続人以外に財産を引き継がせることができるのも、遺言書を作成するメリットです。
遺言書がない場合は、法定相続人が財産を相続することになりますが、遺言書を作成すれば法定相続人以外にも財産を引き継がせることが可能です。例えば、介護をしてくれた人や事業の後継者が法定相続人でない場合でも、遺言書に記載することで財産を引き継がせることができます。

ただし、法定相続人には遺留分がありますので、遺言書を作成する際は、遺留分を侵害しないよう配慮しましょう。

遺留分についてのくわしい説明は、下記の記事をご覧ください。

3. 相続人同士の揉め事を減らすことにもつながる

遺言書の作成は、自身の財産配分を考えるきっかけにもなり、生前にのちの相続人へ分割の意向を話したり、付言事項に想いを記したりすることで相続人同士の揉め事を減らすことにもつながります。遺言書があればどのような揉め事でも回避できるというわけではありませんが、遺言書で意思を示すことで相続人も納得でき、回避できる揉め事もあるでしょう。

4. 付言事項で想いを伝えられる

遺言書に付言事項を記載することで、想いを伝えられるのも遺言書作成のメリットです。付言事項には、法定遺言事項でなければどのような内容でも記載できますが、感謝の気持ちや思い出、財産配分の理由などを記載するのが一般的です。

付言事項がなければ、遺言書は相続内容だけを記載するため、事務的な記載に感じることもありますが、付言事項があると、遺言者の想いや財産配分の意図などを知ることができ、相続人も相続内容に納得しやすくなるでしょう。

付言事項は遺言書の最後に書き添えることが一般的ですが、自筆書面を添えられるケースもありますので、
事前に公証役場または、遺言信託を金融機関でご検討される場合は各金融機関に相談してください。

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付言事項を記載する際の注意点

遺言書の付言事項は遺言者の想いをのこすことができますが、記載にあたって注意したい点がいくつかあります。続いては、付言事項を記載する際の注意点を解説します。

1. 遺言書と矛盾する内容は記載しない

付言事項には、遺言書と矛盾する内容は記載しないように注意しましょう。
付言事項には、法定遺言事項でなければどんな内容を記載しても問題ありません。しかし、遺言書の内容と矛盾しないようにすることが大切です。

2. 相続人全員に対して記載する

付言事項では、相続人全員に向けてメッセージを記載するといいでしょう。
特定の相続人だけに言及した場合、言及されていない相続人が不公平感を抱く可能性があります。相続人によって財産配分の違いがあったとしても、相続人全員に対して記載することにより、相続人の不公平感の緩和につながる可能性があります。

遺言書を作成する一般的なケースと書き方の例

遺言書を作成したことで相続時の揉め事を必ず回避できるわけではありません。しかし、相続人に配慮した遺言書を残すことで、揉め事を避けられる場合もあります。
続いては、遺言書を作成する一般的なケースと遺言書の書き方について、公正証書遺言を例に解説します。

■公正証書遺言の記載例
公正証書遺言の記載例
  1. 上記公正証書遺言はイメージです。

1. 配偶者が安定した生活を続けるために想いを示す

配偶者が安定した生活を続けるために、遺言書にその想いを示すことができます。
例えば、配偶者が住む場所を確保したい場合は、自宅を配偶者に相続するといった内容を遺言書に記載します。その結果、子どもへの相続割合が法定相続割合より減ってしまうのであれば、付言事項にその点について記載しておくといいでしょう。

■自宅を遺言者の妻に相続させたい場合の遺言書の記載例

第◯条
遺言者は相続開始時に有する次の財産を、遺言者の妻◯◯◯◯(昭和◯年◯月◯日生)に相続させる。
  1. 不動産
    1. 土地
      所在 ◯◯市◯◯町◯丁目
      地番 ◯◯◯◯◯番
      地目 宅地
      地積 ◯◯◯.◯◯平方メートル
    2. 建物
      所在 ◯◯市◯◯町◯丁目◯◯◯番地
      家屋番号 ◯◯◯◯番
      種類 居宅
      構造 ◯◯◯◯
      床面積 ◯◯◯.◯◯平方メートル

2. 両親・子どもがおらず兄弟姉妹との揉め事を避けたい

両親がすでに亡くなっており、子どももいない場合、法定相続人は遺言者の配偶者と兄弟姉妹です。この場合も、財産をめぐって揉め事に発展する可能性があります。
例えば、遺言者が親から引き継いだ自宅や土地を、兄弟姉妹が遺言者の配偶者に対して返してほしいと主張し、揉め事に発展する場合があります。自宅や土地を配偶者に相続させるのであれば、上記「配偶者が安定した生活を続けるために」と同様に、自宅を相続させたい相続人を指定して遺言書に記載します。
この場合も、法定相続人となる兄弟姉妹に配慮した遺言内容とするのもひとつの手段です。

3. 自社の株式を後継者に引き継がせたい

経営者が自社の株式を特定の後継者に引き継がせたいのであれば、遺言書にその内容を記載しておきます。
さらに、スムーズに事業承継するために、株式だけではなく事業で使用している不動産なども後継者が引き継げるよう遺言書に記載するのもいいでしょう。
ただしその場合、後継者は他の相続人よりも相続する財産が多くなることもありますので、他の相続人が納得できるように、遺言者の想いを付言事項に残すようにしてください。

■自社の株式を後継者に引き継がせたい場合の遺言書の記載例

第◯条
遺言者は相続開始時に有する次の財産を、遺言者の長男◯◯◯◯(平成◯年◯月◯日生)に相続させる。
  1. 株式
    1. ◯◯株式会社の株式 1,000株
      預託先 ◯◯証券 ◯◯支店

4. 揉めることなく不動産を相続させたい

相続財産に不動産がある場合、遺言書がなければ揉め事が起こりやすくなります。
例えば、遊休不動産を相続させる場合、複数の相続人が相続を主張することもあるかもしれません。遺言書がなければ相続をめぐって揉め事になってしまう可能性もあります。
このようなケースでは、不動産を売却した上で現金を平等に相続させるといった内容を遺言書に記載する方法等が考えられます。
■不動産を売却して相続させたい場合の遺言書の記載例

第◯条
遺言者は相続開始時に有する次の財産を売却し、売却代金を次のとおり相続させる。

妻◯◯◯◯(昭和◯年◯月◯日生) 6分の4
長男◯◯◯◯(平成◯年◯月◯日生) 6分の1
長女◯◯◯◯(平成◯年◯月◯日生) 6分の1

  1. 不動産
    1. 土地
      所在 ◯◯市◯◯町◯丁目
      地番 ◯◯◯◯◯番
      地目 ◯◯◯◯
      地積 ◯◯◯.◯◯平方メートル
    2. 建物
      所在 ◯◯市◯◯町◯丁目◯◯◯番地
      家屋番号 ◯◯◯◯番
      種類 ◯◯◯◯
      構造 ◯◯◯◯
      床面積 ◯◯◯.◯◯平方メートル

5. 孫に財産を引き継がせたい

法定相続人ではない孫に財産を引き継がせたい場合は、遺言書の作成が有効です。法定相続人である子どもが亡くなっている場合はその子(孫)が法定相続人となりますが、子どもが存命ならば孫は法定相続人ではなく、遺言書がなければ孫が被相続人の財産を引き継ぐことはできません。
孫に財産を引き継ぎがせたいのであれば、遺言書にその内容を記載する必要があります。

■孫に財産を引き継がせたい場合の遺言書の記載例

第◯条

遺言者は相続開始時に有する次の財産を、◯◯◯◯(住所:◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番◯号、平成◯年◯月◯日生)に遺贈する。

  1. ◯◯銀行 ◯◯支店 普通預金 口座番号◯◯◯◯◯◯

6. 法定相続人以外でお世話になった人に財産分配させたい

孫へ財産を引き継がせたい場合と同様、法定相続人以外に財産分配したい場合も、遺言書の作成が有効です。
例えば、子どもの配偶者は法定相続人ではありませんが、子どもの配偶者による介護などへの感謝の気持ちから、財産を分配したいということもあるでしょう。そのためには、遺言書に子どもの配偶者に財産を分配する内容を記載するようにします。
この場合も、上記「孫に財産を引き継がせたい」と同様に、分配する内容を遺言書に記載します。

自筆証書遺言の保管制度とは

遺言書の形式は複数ありますが、自筆証書遺言は、自書さえできれば遺言者本人のみで作成でき、比較的手軽で自由度の高い遺言です。しかし、遺言者存命中の紛失や、遺言者逝去後の一部の相続人等による改ざん等のおそれが指摘されていました。
そこで、この自筆証書遺言のメリットは損なわず、問題点を解消するための方策として、「法務局における遺言書の保管等に関する法律(自筆証書遺言書保管制度)」が創設されました(2020年7月10日施行)。
自筆証書遺言を作成した人は、この制度を利用することで、遺言書作成後の管理に起因するトラブルを回避できます。
自筆証書遺言は作成場所を問わず、誰にも知られずに比較的安価に作成できる一方で、紛失、隠蔽、改ざんなどのリスクもありますが、保管制度を使えばリスク抑え手軽に作成できます。
ただし、保管制度は方式を外形的に確認するのみなので、遺言書本文の誤字脱字等の不備リスクがあるほか、保管依頼をする際は指定の遺言書保管所への出頭が必要となるなど、注意が必要です。
また、民法で定められた自筆証書遺言の要件に加え、保管制度を利用する際は様式のルール等があるため、事前によく確認することをおすすめします。

公正証書遺言作成のメリット

公正証書遺言は自筆証書遺言と比較して安全確実であり、相続時のトラブルを防ぐことができます。また、家庭裁判所で検認手続き(*)をする必要がないので、相続人の負担が軽減されます。
三菱UFJ銀行では、ご自身の想いを確実にかなえるためにも、公正証書遺言の作成をおすすめしております。
遺言での財産配分にあたっては、遺留分や相続税等、考慮することがたくさんありますが、三菱UFJ銀行がお客さまの相続への想いをお伺いし、お客さまそれぞれの財産内容や想いに応じた財産の分割案・遺言書案の作成、公証役場での公正証書遺言の作成から、ご逝去時の遺言開示とその後の遺言執行手続きを行います。

  • 検認手続きとは、遺言書の保管者等が証拠保全のための手続きを家庭裁判所に申し立てることです。「法務局における遺言書の保管等に関する法律(2020年7月10日施行)」により、法務局における自筆証書遺言の保管制度を利用した場合、検認手続きは不要です。
記事提供:ナイル株式会社
執筆者:勝目麻希
監修:税理士法人チェスター
  1. 本記事は、2021年1月時点の税制、その他関連法規に基づく内容であり、今後の改正等により相違が生じることがあります。
  2. 本記事は情報提供を目的としており、商品申込の勧誘目的で作成したものではありません。商品の申込時にはお客さまご自身でご判断ください。
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(2023年10月1日現在)
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宅地建物取引業 届出第6号

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