アルゼンチン共和国円貨債券/Q&A(エクスチェンジ・オファー実施以降)
Q | A |
---|---|
1. エクスチェンジ・オファーの結果について管理会社として如何に考えているか教えて欲しい。 |
アルゼンチン共和国(以下「ア共和国」)は、3月18日に、エクスチェンジ・オファーの結果を公式に発表しました。発表によると、エクスチェンジ・オファーへの参加率(参加債券の額面の未償還額面総額に対する割合)は、グローバルベースで約76.15%、アルゼンチン共和国円貨債券(以下「本債券」)では約94.42%とのことです。本債券の参加率が高水準となった背景の詳細は不明ですが、多数の本債券の保有者(以下「本債権者」)が証券会社を通じて本債券を売却し、その多くを取得した海外投資家がエクスチェンジ・オファーに参加したためと言われております。グローバルベースの参加率が、本債券ほどではないにしても、約76.15%という当初の予想を上回る高水準に達したことにより、ア共和国が今後更に条件を改善したエクスチェンジ・オファーを提示する可能性は低くなったと考えられます。但し、依然として、未償還額面総額の約24%、金額にして約200億ドル相当の債権者がエクスチェンジ・オファーに応じていないことを考慮すると、ア共和国が今回と同一又は類似した条件のエクスチェンジ・オファーを実施する可能性は残されていると考えております。 |
2. 本債券の管理会社は、今後、ア共和国とどのように交渉をしていくのか。 |
上記の結果を踏まえ、本債券の管理会社は、ア共和国に対し、今回のエクスチェンジ・オファーの内容が複雑であり、本債権者がエクスチェンジ・オファーへの参加を希望しながらその内容を判断するに足る十分な時間がなかった可能性を指摘し、このような本債権者については再度エクスチェンジ・オファーを実施するよう要請して参ります。同時に、今回のエクスチェンジ・オファーに応じなかった欧米の投資家グループとも情報交換を行いつつ、IMF等の国際金融機関及び各国政府の協力を得ながら、ア共和国に対し誠意ある対応を行なうようを求めて参ります。 |
3. エクスチェンジ・オファーが行われた後の本債券及び新債券の位置付けについて教えて欲しい。 |
本債券は、債券の要項(以下「本債券の要項」)において、ア共和国の現在及び将来にわたる非劣後及び無担保の対外債務と常に同等の地位を有すると定められています(本債券の要項第2項)。従って、本債券は、法的には新債券を含む本債券以外の全ての対外債務と支払順位、担保権その他全ての点に関して同順位の扱いであると考えられます。但し、新債券の目論見書において、申し込みのなされなかった本債券については、不定期に不履行が続く可能性がある旨記載されており、このような記載に照らすと、ア共和国が本債券の要項を遵守し本債券を新債券と同順位に扱うか否かについては、依然、不透明な状況が続くものと考えられます。 |
4. ア共和国は債権者集会を召集しなかったが、何故、本債券の管理会社の裁量で債権者集会を開催しなかったのか。 |
当行は、ア共和国が提案するエクスチェンジ・オファーが本債権者の権利に重大な影響を与える事由であると考え、ア共和国に対して、以前より繰り返し債権者集会の開催を求めて参りましたが、ア共和国はかかる要求に一切応じず、一方的に手続きを強行しました。当行は、本債権者に対して善管注意義務及び公平誠実義務を負う本債券の管理会社として、ア共和国が債権者集会を開催しない場合、本債券の管理会社の裁量で債権者集会を開催することも検討致しました。しかしながら、債権者集会の決議によっては、エクスチェンジ・オファーに応じたくない本債権者又は逆に応じたい本債権者の権利行使を阻害することになりかねず、こうした結果をもたらす行為は本債券の管理会社の裁量の域を超えるものと判断されましたので、敢えて本債券の管理会社の裁量によって債権者集会を開催することは致しませんでした。なお、回号ごとに未償還額面総額の1/10以上を保有する本債権者による請求があれば、本債券の管理会社が債権者集会を招集することも可能でしたが、このような請求はありませんでした(質問5.回答もご参照下さい。)。 |
5. 債権者集会の手続について聞きたい。 |
本債券の管理会社は、エクスチェンジ・オファーに応じなかった本債権者の権利保護を図るべく、ア共和国に対し、再度、エクスチェンジ・オファー実施の提案を行なった上で、債権者集会を招集して集会の場で新債務再編案について説明を行い、本債権者の意思を問うよう要請しております。ア共和国が本債券の管理会社の要請に応じて債権者集会を招集した場合には、別途、お知らせ致します。 なお、本債券の管理会社は、本債券の各回号の未償還額面総額の10分の1以上を保有する本債権者が共同で又は単独で本債券の管理会社に対して書面で請求を行った場合には、当該回号について本債権者の権利に重大な影響を及ぼすと本債券の管理会社が認めた事項を議題とする債権者集会を招集します。 [手続]
当該集会に本人又は代理人が出席しない場合、本債権者は、当該集会の招集公告に定める事項を記載した書面を本債券の管理会社に交付することにより議決権を行使することができます。 |
6. 本債券の管理会社はア共和国に対し本債券の元利金等の支払を請求する訴訟を提起できないのか。 |
本債券の管理会社は、法的には、管理委託契約及び本債券の要項に基づき、東京地方裁判所に対し、日本国内にあるア共和国の資産を仮に差押える処分を求めるとともに、ア共和国に対して本債券の元利金等の支払を請求する訴訟を提起することができます。しかし、現在判明している日本国内にあるア共和国の資産は大使館のみであり、同資産は外交関係に関するウィーン条約により差押え又は強制執行を免除されているため、仮に本債券の管理会社がア共和国に対して訴訟を提起し勝訴した場合でも本債券の元利金等を同資産によって回収することはできませんので、現時点で、敢えて訴訟を提起することは致しません。 |
7. 米国における集団訴訟への参加もしくはGCABにて検討している国際投資紛争解決センターへの仲裁・調停を求めないのか。 |
上記の通り、管理会社としては、仮に裁判に勝訴したとしても、本債券の元利金等を回収することはできないと考えておりますので、敢えて訴訟を提起致しません。仮に、本債権者が本債券の管理会社に対して、ア共和国に対する訴訟手続きや国際投資紛争センターへの調停を求める場合は、本債券の回号毎に債権者集会を開催し、その旨の議案について特別決議が採択される必要があります。(質問5.回答もご参照ください。)なお、手続きにかかる費用について事前に本債権者の方に負担して頂くことが出来ない限り、管理会社としては本手続きに踏み切ることができません。 |
8. ア共和国から支払われる新債券の利払い資金に対する差し押さえはできないのか。 |
新債券の目論見書において、新債券はア共和国中央銀行の機関として設立された証券決済機構であるCRYL名義で登録され、またはCRYLにおいて保管され、ア共和国は元利金支払いが当該名義人であるCRYLになされた時点で免責されると記載されています。従って、CRYLに元利金の支払いがなされた時点で、当該金銭の所有権はア共和国から新債権者に移転すると考えられ、差し押さえの対象にならないと考えられます。 |