ごみ拾いSNSを開発。SNS運用から見えた「“ものさし”が存在しない」課題

ピリカは2011年に創業しています。創業の経緯を教えてください。

子どもの頃に読んだ本がきっかけで「環境問題に携わる仕事をしたい」とずっと思っていたのですが、大きな転機は京都大学大学院に在学中の23歳のとき、3カ月弱の間、世界一周の旅に出たことでした。

さまざまな環境問題に直面する新興国を中心に旅を重ねたなか、私が最も関心を惹かれたのが「ごみの問題」でした。インドの川にはごみが流出し、ブラジルのジャングル奥地にも人間が捨てたチョコレートの包み紙があったりします。人間が暮らし、人間が足を踏み入れた場所には必ずこの問題がつきまとっていました。

環境問題の解決に研究者としてアプローチしていくことにはすでに限界を感じ、在学中インターンとして働いても「自分は会社に入ったら上司と揉めがちな人間だな」と気づいたことから(笑)、起業の道を模索。帰国後の2010年、学生発のプロジェクトとしてごみ拾いSNS「ピリカ」の開発に着手し、翌11年株式会社ピリカを創業しました。

同社で最初に手掛けた事業・ごみ拾いSNS「ピリカ」とは?

人間社会から発生した大量のごみの大部分は収集・処理されますが、一部は自然界へ流出し、環境破壊を引き起こしています。帰国後にビジネスとしてごみ問題を考えたとき、収集・処理の分野にはすでに多くの競合がいました。しかしごみの流出問題はまだ競合が少なく、もし誰も見つけていない効率的な解決策を開発できれば、世界中でそのサービスが使われるだろうと考えました。

そこで在学中に編み出したのが「ごみの流出を含む様々な環境問題をインターネット上の地図に載せて可視化し、解決を促す」というアイデアです。友人にプログラミングも教えてもらいながら独学で学び、事業化を進めました。

その後同サービスは発展し、現在はごみ拾いSNS「ピリカ」としてリリースしています。ボランティアで行ったごみ拾いの様子をテキスト・写真・位置情報等とともに投稿できるSNSで、現在は日本国内のみならずアプリの登録ユーザーが世界108カ国超。多くの民間企業・自治体・支援団体様の協賛に支えられ、個人向けアプリの他「企業・団体版」「自治体・地域版」もリリースしています。

まちに流出したごみを専門的な回収・処理業者などが介入するのではなく、民間レベルで解決する。それを可視化するのがピリカSNSでした。しかし同SNSを運用するなかで、新たな課題が見えたそうですね。

きっかけは「(ピリカSNSが)本当の問題解決につながるのか」という議論でした。我々はあくまで“科学者として”この領域で携わっていきたいと考えているため、開発したサービスが確実に解決の道へつながっているエビデンスが大切だと思っています。

ピリカSNSの場合、ポイ捨てごみの変化量・改善率がわかる“ものさし”が存在しなければ、本当の解決策になっているのか測りようがありません。サービス自体は堅調で登録ユーザーも伸びていましたが、SNS運用だけではだめだと気づき、先述の“ものさし”を作るため着手したのがポイ捨て調査システム「タカノメ」の開発でした。

新たに始めた「マイクロプラスチック」流出問題へのチャレンジ

ポイ捨て調査システム「タカノメ」のビジネスとは?

調査用スマホアプリを使って、ポイ捨てごみや歩きたばこの分布・深刻さを調査するサービスです。具体的な手順としては、まずお客様(自治体等)と打ち合わせのうえ、ご予算に応じた回数・範囲・手法で計画を立て、当社スタッフあるいはお客様自身でスマホによる路上撮影を行います。Googleストリートビューの歩道版をイメージするとわかりやすいかもしれません。

その後撮影した動画をプログラムで解析。人力での目視チェックも重ねながら、そのまちに落ちているごみの種類・量を読み取り、調査結果をヒートマップやレポートとしてご納品しています。自治体様はそれらのレポートを1つの根拠にしながら、清掃人員の配置や喫煙所の配置の結果の検証などにお役立ていただいています。

そうした流れのなか、さらに新たな施策として、同じく調査システムである「アルバトロス」の開発に着手されます。

タカノメが「陸地」が調査対象となるのに対し、アルバトロスは「河川・湖・港湾」が主な調査対象です。当初は特定のごみに限定せず、比較的大きなごみを調査対象としていましたが、そこでは「マイクロプラスチック」が問題になっていると知りました。

私たちの身の回りはプラスチック製品で溢れかえっています。それらは紫外線などの影響で直径5mm以下の細かい破片——マイクロプラスチックとして河川・海洋に流出していきます。まちなかにある屋外の人工芝なんかも長年使っていると経年劣化し、雨などが降るとその破片が下水処理されます。下水場でも処理できないほどの細かさだと、生態系の生物はもちろん人体にも取り込まれ、人体に有害な化学物質を吸着する性質を持つことを懸念する研究報告もあります。

分析はどのような仕組みで行われるのですか。

対象エリアの河川の水中・水底で専用に開発した機器でサンプルを採取し、サンプルからプラスチック片を抽出。続いてプラスチック片の成分・大きさ・形状・色などを読み取り、もとの製品の推定・流出経路の絞り込みなどにも踏み込んでいます。

こちらも主には自治体様にお使いいただいているサービスですが、最近は企業様にも関心を持っていただいています。調査回数を増やすことでアルバトロスのデータ量が蓄積され、それがビッグデータ化していけば、社会が気づいていない“不都合な真実”にも辿り着けるはずです。それらの“不都合な真実”は、自治体・企業様、そして我々自身の行動変容につなげていけることができると考えています。

Rise Up Festaは「事業計画の部分を含めたコメント、アドバイスが充実していた」

ビジネスサポート・プログラム「第7回Rise Up Festa」のソーシャルビジネス部門で最優秀企業を受賞しました。参加の動機について教えてください。

Rise Up Festaには過去にも何度か応募させていただいたことがありました。動機としては「(最優秀企業の特典である)賞金がほしかった」——というのは半分冗談としても(笑)、自由に使える開発資金が手に入ることは魅力の1つでしたね。過去の受賞者の方々のお顔を拝見し、自分のビジネスに身近な方々が参加されていたことも、要因としては大きかったです。

Rise Up Festa参加後の感想は?

率直な感想を申し上げると、こうしたスタートアップの大会としては、とても厳粛な審査プロセスで進んでいった印象があります。決して負担が大きくなったという意味ではなく、素直にその雰囲気を楽しめました。

また、別のスタートアッププログラムにもたびたび参加していますが、Rise Up Festaはサポートがとても手厚いと思いました。現在は三菱UFJ銀行の担当者の方が当社専属として就いていただき、ピリカの事業に近い企業様とのビジネスマッチングの話も持ってきてくださいます。当社の場合、事業として比較的ニッチな領域なのでビジネスマッチングもしにくいと思うのですが、いつも的確なご提案で、視野の広さはさすがだなと思っております。

最後に、今後の展望を教えてください。

科学技術の力であらゆる環境問題を克服することを目指す会社でありたい、と考えています。そのためにも、本日紹介させていただいた「ピリカSNS」「タカノメ」「アルバトロス」といった主力サービスを提供しつつ、意図せずに起こってしまう環境問題——すなわち人類にとっての“不都合な真実”を見つけ、それら解決の糸口としながら、さまざまな領域の方を巻き込み事業を発展していければ、と考えています。

最近は人材採用にも力を入れており、プロダクトマネージャー、ウェブエンジニア、セールス、プロジェクトマネージャー、カスタマーサクセス、マーケティング、PR、バックオフィス、インターンシップなどのメンバーも募集中です。当社組織に人材を集め、環境問題の分野での世界最強のチームを作りたいと思っています。

本日はありがとうございました。