「数える」手間を大幅に削減——産業界の“常識”を覆す

——日本政府HPの海外向け動画などでも取り上げられているフェニックスソリューションのRFID金属タグ。その独自性とは?

RFIDタグのタグは「荷札」。一般の方はなかなか目にしませんが、産業界で使われています。アパレルでは衣服のラベルに取り付けられたタグの数やID(色やサイズの情報)を読み取ったりします。ところが、従来のRFIDタグは金属製のパレット(物流で荷物を載せて運ぶ荷役台)やカゴ、金属そのものにつけると電波干渉を起こすため、読み取りができませんでした。フェニックスソリューションのRFID金属タグは、金属でも読み取り可能。さらに、金属の裏側につけた場合でも読み取れるという画期的な技術です。

——どのような場所で使われているのでしょうか。

たとえばリース会社ですね。イベント向けにパイプ椅子を貸し出すとき、これまでは何百、何千もの椅子をひとつひとつ数える必要がありました。このRFIDタグを使えばわずか数秒で何脚あるのかがわかります。

建築や物流の現場では、従来から「数を数える」、「個品の情報を識別する」という作業に多くの人手と時間をかけていました。専門性の高い製品の場合は熟練者がそれなりに時間を費やして対応することになるので、大変なコストとなります。

建設であれば何万本の鉄骨を数え、それぞれがどこに使用されるものかを判別することも可能です。また、金属資材が積み重なっていても読み取れることが大きな特徴です。通常のRFIDタグは水に弱いという性質がありますが、弊社のRFID金属タグは3cmの水没程度なら読めますから、雨が降っても読み取り可能です。ゲート型の固定読み取り装置を使って、前を通過するフォークリフトの搭載物の数量を数えることもできますから、モノの管理にかかる人件費や時間を大きく削減できます。

働き方改革にもつながる、RFIDタグによる効率化

——少子高齢化の今、人手不足解消にもつながりそうですね。

これまでも産業界は効率化を推し進めてきました。数秒の無駄さえ省くカイゼン努力の積み重ねにより、効率化は相当なレベルにまで達していることでしょう。最近は、IoTやシェアリングも、多くの企業で検討・採用されています。それでも、こうした金属製資材の入出荷管理、棚卸し管理は、どうしても機械化、効率化できなかった作業でした。実に前時代的で、世界の産業界の大きな「困りごと」となっていたのです。

フェニックスソリューションのRFID金属タグによって人手を介する作業を減らすメリットは非常に大きいと思います。短時間で作業を行い、間違いが減ること、また事務作業時間も軽減しますので、働き方改革にもつながります。

アンテナの達人技術者が可能にした、不可能

——いったいどのような技術なのでしょうか。誕生、創業の背景も教えてください。

カギとなるのはアンテナの設計なんですね。読み取り装置から電波を飛ばすと、タグが起電して情報を返します。しかし金属があると、従来のRFIDタグは電波が干渉して読み取りができなくなってしまいます。当社のタグは受け取った電波を活用し、金属そのものをアンテナとすることで、表でも裏でも読めるのです。また、従来のRFID金属タグに比べ、小型薄型での設計が可能になりました。

この技術を生み出した技術者、技術担当取締役の杉村詩朗は40年以上ずっと開発に携わっているアンテナのプロです。「どうせやるなら世の中でできない変わったことをしたい」という思いから、これまで誰も実現できかった技術にチャレンジしました。

会社は現在で4年目。昨年は40万個、今年は8月の時点ですでに50万個を受注しています。東京オリンピックに向けて建設業やリース会社などの旺盛な受注環境を受け、弊社技術への需要、期待も高まっています。自動車など大手製造業からの引き合いも複数あり、これからどんどん普及、浸透していく手応えを感じています。

——さまざまなビジネスコンテストで受賞歴をお持ちですが、Rise Up Festaで最優秀賞を手にした反響は?

Rise Up Festaをきっかけに複数大手企業で検討が進んでおり、良いお話となりそうです。三菱東京UFJ銀行さんのお取引先から引き合いをいただけること、会社として信用につながるということは大いにプラスであると考えています。

——現状の課題は。

技術を最大化するための体制づくりです。技術者の杉村は毎日精力的に開発を行っていますが、サポートスタッフを更に強化して開発能力を最大化したいです。今はIoTブームですが、ことRFIDに関してはアナログ回線、アンテナ設計能力の世界なので、大企業でもなかなか開発経験者はいません。仮に向こう3年間で10の発明ができるとしたら、50できるような環境を整える。世の期待に応えるためにも、そう動かなければならないと考えています。また、営業も生産能力も上げていかないと需要に間に合いません。

現在、そして未来。進化があるからこそ、次の進化につながっていく

——今後、会社としてどのような未来を描いておられますか。

まずは国内での普及を進め、世界にも稀な特殊製品なので、海外にも働きかけを行っていきます。2019年、2020年あたりには上場したいですね。そのためにも人数を増やし、営業と生産、開発に力を入れていく必要があると考えています。

もちろん、上場はゴールではありません。次に力を入れていきたいのが技術承継です。世界的に大きなインパクトを与える製品ですが、我々はクローズドではなくオープンな展開を考えています。RFIDを中核事業に位置づける企業があれば、この技術を共に発展、継承して欲しいからです。進化があってこそ次の進化があるのですから、この技術を更に進化させていく、それが、我々の思いです。

来週はシンガポール、ドイツ、アメリカではシリコンバレーを訪問しますが、非常に期待されています。これまで訪れた名だたる企業では、みなさん満面の笑みで「これはすごい」と言ってくださいました。そうした瞬間が何よりの喜びですね。