最小人数で最大の効果を出すための戦略は「アウトソーシング」

――Rise Up Festaの受賞、おめでとうございます

ありがとうございます。

――受賞後、変わったことなどはありましたか

社会的な信用が増したのを感じています。導入がスムーズにいく後押しになっています。

――現在、何社ぐらいが「Teachme Biz」のサービスを利用しているのですか

現在およそ500社に導入していただいていて、その中心は飲食業と税理士事務所の2業種となっています。
飲食業におけるサービスの広がりはある程度狙った結果ですが、税理士事務所は正直意外でした。「Teachme Biz」は、画像をメインとしたマニュアル作成ツールなので、飲食店のような現場での手順記録が必要になる業種には特に適しているんです。一方、税理士事務所でサービスが広がったのは、決算書のように作成ルールがきっちりと決まっている書類とマニュアルの相性が抜群だったからです。

――それらの企業へは、売り込み営業をきっかけに導入しているんでしょうか

いえ、今は口コミや紹介、取材していただいた記事からの引き合いなどでじわじわと広がっています。税理士さんに使ってもらえると、その顧問先への波及効果があることも大きいですね。
社員は8人だけなので、現時点では売り込み営業に積極的になれない理由の1つです。

――8人ですか! 事業の規模に対してかなり少ない人数ですね

そうですね。広報、マーケティング、サポートなど、サービスの根幹に関わる業務以外は全部外に出すことで人員を抑えています。
スタッフを雇うとなると固定費が上がりますし、固定費があがれば利益率が下がり、単価が安くできなくなって買える人が少なくなります。すると収益が下がり、歯車が狂ってしまう。そのため、いかに固定費をかけずにやっていくかには特にこだわっています。

――アウトソーシングは、何から手をつけはじめるとうまくいくでしょうか

まず、請求書や見積もりなどの会計まわりをクラウド化するのは必須です。それから、パターン化した業務を見つけたら都度マニュアル化して、どんどん外に出していく。気をつけたいのは、その業務についてしっかりと理解した上で移管するということです。また、一気に移管すると破綻するので、1つできたらまた次、というように少しずつ渡していくといいでしょう。

開発未経験のコンサルタントが生んだITサービス

――起業のきっかけについて教えてください

大きなきっかけは、前の会社が民事再生になったことですね。「じゃあなにかやってみるか」という感じでスタートしました。事業の内容をマニュアル作成に定めたのは、前職のコンサルティングの経験が活きるだろうと考えたからです。これまでに蓄積してきた、業務の洗い出しや整理などのノウハウが、このサービスの参入障壁になるだろうと。こうして前職の仲間と一緒に開業しました。

――全員コンサル出身ということは、開発は外注ですか?

いえ、独学でやりました。本を読みながら、ひたすらソースコードをコピーして。自転車と一緒で、ひたすらやっていたら補助輪が取れたような感じで、1年半〜2年ほど経ったころには、本を見なくてもつくりたいものがつくれるようになりました。ただ開発中は収益を得られないので、もっぱらコンサルティングのほうで稼いでいましたね。

――どうしてそんな面倒なことをやろうとしたのでしょうか?

前職で、開発部門に新しいシステムのイメージをもっていってもなかなか承諾してもらえなかった経験があったからです。しかも、できあがったものが自分のイメージしていたものと同じとは限らない。それだったらもう自分達でやってしまおうと思ったんです。

未経験者ばかりでつくったサービスだったので、失敗を避けるために段階を踏みました。はじめに「Markee」という「Teachme Biz」の画像編集機能だけを切り出したアプリを発表して意見を集めました。それから個人向けの「Teachme」というサービスを提供し、そこで集まった意見をもとに閲覧・編集権限などの管理機能を整え、2013年に「Teachme Biz」をリリースしました(「Teachme」は今年2月にサービスを終了しています)。

日本全体の効率化のため「使ってもらうこと」を最優先に

――月々5,000円からという価格は安すぎるように感じるのですが、上げようとは思わなかったのですか?

あまり価格を上げてしまうと利用できない企業のほうが増えてしまいますよね。最も利用の多いPremium20(管理者20人以下、閲覧無制限のプラン)は月額15,000円なんですが、これ以上高くしてしまうと小〜中規模の飲食店にはキツくなる。でも、最も数が多いのはこの層なんです。日本全体の効率化を図るには、ここに勝負をかけるしかないと考えています。

――開発の際、重視したことはなんですか?

当たり前のようでなかなか実現するのが難しいことですが、「使われるマニュアル」をつくることです。そのため、シンプルであること、画像を軸にして手順を伝えることにはこだわりました。マニュアルをつくる際は必ず画像をつけなくてはいけない仕様になっています。

「画像がなくてもマニュアルをつくれるようにしてほしい」という要望をいただくこともあるんですが、それってつくる側は楽だけど見る側はうんざりするじゃないですか。文字だらけで。だからやらない。

つくる側に視点を移動すると、あまり機能が増えると使いこなせず嫌になってしまうので、「機能を増やしてほしい」という要望にはお応えしていません。
「どうしたら使い続けてもらえるか」という点に主軸を置いて、やるべきこと、やらなくていいことは、きちんと線引きするようにしています。

一方、全部拒否するのではなく、明確な目的・価値があれば応えるようにはしています。最近では、「清掃の手順」を説明するのに15秒の動画ではどうしても足りないことが分かったので、最長20分まで延ばせるオプションを追加しました。

攻めに転じるスタディスト。海外展開も視野に

――Rise Up Festaに応募した動機について教えてください

最初は知人である山口豪志さん(参考:ビジネスは科学である――自らをビジネスモデルマニアと称する山口豪志さんのビジネス哲学)の紹介でした。「こんなのがあるんだけど出てみないか」ってお話をいただいて。

これまではビジネスコンテストに出るよりもユーザーを見ることを優先にやってきたのですが、「そう言えば銀行系のコンテストってなかったな」と思ったんです。
MUFGの役員・経営層を前にプレゼンして、その反応を直接見られる機会というのはなかなかないと思いました。応募を決めたのは、そこに大きな価値を感じたからですね。

実際に、受賞したことが自信につながりましたし、営業活動を行うにあたってのメリットが大きい。新規のお客さまとのやりとりがスムーズにいく後押しにもなっていると感じます。

『Rise Up Festaのネットサービス・情報・ロボット技術部門において優秀賞を受賞』

――今後の課題について教えてください

キャッシュフローはプラスに転じたので、これからは攻め時だと考えています。
「Teachme Biz」を拡大することはもちろん、このサービスは「自分のやったことを人に伝える」というものなので、たくさんの派生ビジネスの可能性をもっています。しかし、それをやるには今の社員8人では足りません。なので、まず人員を増やしていくことが1つ。

それから、マニュアルは日本に限定されないので、今後は海外を含めた展開も考えています。特に、日本のサービス業がマレーシア、ベトナム、カンボジア等の東南アジアにどんどん進出していますので、現地スタッフの育成等でお役に立つべく、進出したいと考えています。言語が違うからこそ、画像ベースのTeachme Bizの強みが活かせると思います。