「コーディネーター介在型」のマッチングとは?

――具体的な事業内容を教えてください

ものづくりの領域において、技術を必要としている大企業と、技術をもつ中小企業をマッチングするサービス『Linkers(リンカーズ)』を運営しています。

具体的には、

  1. (サイト上で)マッチングに必要な条件を登録する
  2. リンカーズと提携している1200名のコーディネーターが該当する企業をリストアップ
  3. 一次・二次選考を経て面談し、最適な1社を絞り込む

というフローでマッチングしています。

――コーディネーターを介在させる方式はどのような経緯で生まれたのですか?

Linkersを始める前のことですが、『eEXPO』というオンライン展示会サービスを展開していました。「中小企業に自社の情報を登録してもらい、技術を求める企業にその情報を検索してもらう」システムです。

このサービスには需要があると考えていたのですが、ネットで場を提供するだけではなかなかマッチングが進みませんでした。情報を登録する側の中小企業としては、秘密保持契約の存在や技術を盗まれるリスクなどがあり、情報公開が難しい状況だったからです。ものづくり業界において、こうした技術に関する情報は10%くらいしか公開されていない印象があります。

そこで、コーディネーターによるマッチングの仕組みを考えました。
eEXPOをはじめる際、登録企業を500社集めたのですが、それらを紹介してくれたのがコーディネーターの方々でした。彼らは、 Web上には公開されていない情報をもっていましたし、ひとりで数十社、数百社のネットワークをもっていました。そこで、彼らを軸にした方がマッチングが進むと考えたんです。

――マッチングの精度とスピードを上げるためにしていることは?

精度とスピードを上げるための施策は3つあります。

まず、1つ目が「ビッグデータの活用」です。
Linkersでは、多忙なコーディネーターのサポートツールとしてビッグデータを活用しています。まず、コーディネーターが担当している企業のホームページの情報を収集・分析し、マッチングの可能性が高い企業をピックアップします。このデータを担当コーディネーターに通知し、マッチングに役立ててもらうという仕組みです。

2つ目は「落選レポートの作成」です。
落選した企業に対し、落選の理由を記したレポートを作成してお渡ししています。これは、基本的には発注側の企業が入力した情報をベースにして自動生成しています。自社の特性や弱みを俯瞰的に知っていただき、技術の向上に繋げていければと考えています。

最後は「コーディネーターとのコミュニケーション」です。
物事をうまく回していくにはやはり直接人と会うことが大事です。弊社では営業担当が頻繁にコーディネーターの方々に会いに行っています。今後は、人工知能によってマッチングの精度を向上できる仕組みをつくりたいと考えています。

――実際にサービスをはじめてみて、どのような手応えを感じていますか

発注後2〜3週間で、ベストマッチな会社が確実に3社ほど見つかります。技術が見つからずに頓挫してしまうプロジェクトって実はとても多いのですが、1年以上スタックしていた案件が、(Linkersで)発注した2週間後にマッチングに成功することもあります。

例えば、大手デバイスメーカーが「異物を検出する機械」をつくれる企業を見つけられずに悩んでいたのですが、リンカーズのマッチングを介して解決できる技術をもった会社が見つかったいうものがあります。

Linkersは「99%はできているのに最後の1%の技術が見つからなくて製品化できない」案件を動かすサービスだと感じています。

3つの転機によってサービスが大きくスケールした

――サービスを始めてから現在までに転機となった出来事は?

これも3つあります。

まだLinkersが始まったばかりのころに1つ目の転機が訪れました。
当時は東北経済連合会と業務提携して大手企業を紹介していただいていたのですが、まだ実績がなかったため、契約を取るのもコーディネーターと守秘義務契約を結ぶのも非常に大変でした。
しかし、訪問するたびにお礼状を送るなど、企業理念にもしている「感謝」を形にしようとしているうちに徐々に契約が取れるようになっていきました。

2つ目が一番大きな転機でしたが、これはコーディネーター数が200名を超えたころに起こりました。もとから付き合いのあった日本能率協会コンサルティングから大手企業の案件を紹介してもらえるようになり、その案件が大成功を収めたんです。大きな実績ができたことで、そこから一気に発注が増えていきました。

3つ目の転機は、その大成功を世間に知らせるために記者会見を開こうと思ったときに訪れました。PRのやり方をビズリーチの南さんに相談したのですが、「そんなことより早く資金を入れた方がいい」とベンチャーキャピタルのジャフコを紹介してくれたんです。それからすぐに2億円の出資が決まり、事業のスピードが一気に加速しました。ジャフコの支援は、資金面のみならず、案件の紹介もしてくださるのでとても助かっています。

常に感謝を忘れず、感謝を行動で示す

――経営にあたり大事にしている考え方は?

私は新卒から京セラに6年いたので京セラフィロソフィーの影響を受けているのですが、弊社の企業理念の中で特に大事にしているものとして「常に感謝を忘れず、感謝を行動で示す」という理念があります。前述のお礼状もその1つです。

事業には、

  • G(goal :目標を定める)
  • I(issue:課題を洗い出す)
  • S(solution:解決方法を見つける)
  • O(operation:実行する)
  • V(value:価値を生み出す)

という5つのフェーズがありますが、GとIとSまではひとりでできるものの、Oをクリアするにはたくさんのステークホルダーを巻き込んでいく必要があります。そのときに必要になってくるのが前述の理念です。
Linkersというサービスは、事業に関わってくれる全員がWin-Winになれるように設計していますし、皆が気持ち良く仕事ができる環境づくりにもこだわっていますね。

また、トライアンドエラーを早く回すことを心がけています。うまく行かないと判断した場合に素早く事業内容を切り替えて来たことで現在のLinkersがあります。

――なぜRise Up Festaに応募を?

Rise Up Festaのソーシャルビジネス部門において優秀賞を受賞

三菱東京UFJ銀行は全国の大企業・中小企業とのリレーションをもっているので、自社のネットワークを広げるきっかけになればと思ったのが第一の理由です。

2つ目の理由は、ファイナンスの連携です。
マッチングが成立しても、資金面のネックで案件が進まないケースがあります。しかし自社ではファイナンス機能をもつことができないので、その部分をデットとエクイティの両方をカバーできるMUFGと連携できたらと考えました。

Rise Up Festaで受賞したのち、メガバンクに太鼓判を押してもらったことで信用が増し、良いPRにもなったと実感しています。これまではあまりビジネスコンテストに積極的ではありませんでしたが、今後はもっと出ていこうと考えていますね。

――今後の取り組みは?

日本の製造業が、大企業から中小企業まで、もっと元気になる仕組みを実現させるために「日本ものづくり株式会社」をつくりたいと考えています。

現在、欧米の大手企業が海外の技術を利用しようと考えたときに、パートナーとして日本ではなく中国や東南アジアの企業を選択する「ジャパンパッシング」(日本を素通り)が起きています。その主な要因は、「英語対応している企業が少ないから」というもの。そのうえ、中国の企業は設計から量産までを一気に請け負ってくれます。

日本がこれに対抗するには、国内の工場同士のネットワークをつくりつつ、海外へのPRを上手にやっていく必要があります。

この2つの両方を支援するのが「日本ものづくり株式会社」です。
まず、国内において設計から量産までのすべてを受けられる仕組みづくりを行います。そして英語対応もできるプロジェクトマネージャーをたくさん雇い、ものづくりの領域で日本と海外をつなげる役割を担っていきたいと考えています。

日本のものづくりをもっともっと盛り上げていきたいですね。